ロードバイクのパワーゾーン・心拍ゾーン一覧|FTPとLTHRからの計算方法と、Zwiftのゾーンとの違い

この記事の目次
トレーニングの記事やワークアウトの説明を読んでいると、「L2で90分」「Z4を10分×3本」「ゾーン2」など、強さの書き方がいろいろ出てきます。L1〜L7とZ1〜Z6は何が違うのか、自分のFTPや心拍数だと何ワット・何bpmになるのか、Zwiftの画面の色とサイコンのゾーンがなぜ合わないのか。ここでつまずく人は少なくありません。
この記事では、パワーゾーン(コーガンの7段階)と心拍ゾーン(LTHR基準)を一覧表で整理し、FTPとLTHRから自分のゾーンを出す計算例、Zwiftの6段階のゾーンとの違い、パワーと心拍の使い分けまでまとめます。
トレーニングゾーンとは?基準はFTPとLTHR
トレーニングゾーンは、運動の強さをいくつかの段階に分けた目安です。同じ「きつめのペース」でも、人によって出せるワット数や心拍数は違います。そこで、自分の基準値に対する割合(%)で段階を決めておくと、誰でも同じ物差しで練習の強さを決められます。
自転車のパワーゾーンでは、1時間ほど維持できるパワーの目安であるFTP(Functional Threshold Power)を基準にします。心拍ゾーンでは、LTHR(乳酸閾値心拍数)を基準にする方法があります。FTPの意味はFTPとは?、測り方はFTP測定方法の比較で詳しく解説しています。
パワーゾーンを考案した運動生理学者のアンドリュー・コーガン博士は、ゾーンは最大値(VO2maxのときのパワー)ではなく閾値のパワーを基準にするほうが理にかなっていて、心拍についても最大心拍数より閾値の心拍数を基準にするほうが理にかなっている、と説明しています。この記事でFTPとLTHRを基準にするのはそのためです。
パワーゾーン一覧(コーガンの7段階:L1〜L7)
もっとも広く使われているのが、コーガンの7段階のパワーゾーンです。TrainingPeaksに掲載されている表をもとに、各レベルの名前、FTPに対する割合、きつさの目安(Borg CR10という10段階の主観的運動強度)、主な使い方をまとめました。
| レベル | 名前 | FTPに対する% | きつさ(CR10) | 主な使い方 |
|---|---|---|---|---|
| L1 | アクティブリカバリー | 55%未満 | 2未満 | 回復走、インターバルの合間。会話をしながら走れる |
| L2 | エンデュランス | 56〜75% | 2〜3 | 「一日中走れる」ペース。いわゆるLSD |
| L3 | テンポ | 76〜90% | 3〜4 | ファルトレク、元気な集団走。会話は途切れがち |
| L4 | 乳酸閾値 | 91〜105% | 4〜5 | TTに近い強さ。10〜30分のブロックを繰り返して行う |
| L5 | VO2max | 106〜120% | 6〜7 | 3〜8分のインターバル |
| L6 | 無酸素容量 | 121%超 | 7超 | 30秒〜3分の高強度インターバル |
| L7 | 神経筋パワー | 設定なし | 最大 | ジャンプ、スタンディングスタート、短いスプリント |
L6とL7の扱いに注意してください。原典では、L6は「FTPの121%超」で上限がなく、L7は%の範囲そのものが決められていません。L6を「121〜150%」のように上限付きで載せている表も見かけますが、原典の数字ではありません。L7は数秒〜十数秒の全力で、FTPの何%かより「出せる限りの力」で走るゾーンだと考えるとわかりやすいでしょう。
計算例:FTP 200Wの場合
FTPに各レベルの%をかけると、自分のゾーンのワット数が出ます。ここでは例として、FTPを200Wとして計算しました(小数点以下は四捨五入)。
| レベル | FTPに対する% | 例:FTP 200W |
|---|---|---|
| L1 | 55%未満 | 110W未満 |
| L2 | 56〜75% | 112〜150W |
| L3 | 76〜90% | 152〜180W |
| L4 | 91〜105% | 182〜210W |
| L5 | 106〜120% | 212〜240W |
| L6 | 121%超 | 242W超 |
| L7 | 設定なし | ― |
原典の表は整数の%で区切られているため、55%と56%の間のような境目があります。実際の練習ではそこまで厳密に考えず、目安の範囲として使えば十分です。
自分のFTPとLTHRで計算したい場合は、次の計算ツールに数字を入れてください。この記事の表と同じ%と四捨五入で、ワット数と心拍数を出します。
パワー・心拍ゾーン計算
FTPとLTHRを入れると、ゾーンごとのワット数・心拍数を計算します。入力した数字はこの画面の中だけで計算し、どこにも送信・保存しません。
SST(スイートスポット)はどこ?
SST(スイートスポットトレーニング)は、7段階のどれか1つのレベルではなく、L3の上のほうからL4の下のほうにかけての強さを指す呼び名です。RIDE-GATEでは、SSTをFTPの88〜94%として解説しています(例:FTP 200Wなら176〜188W)。効果や心拍数の目安はSSTとは?をご覧ください。
心拍ゾーン一覧(LTHR基準)
心拍ゾーンは、LTHR(乳酸閾値心拍数)に対する割合で決める方法を紹介します。LTHRは心拍数でみた「閾値」で、パワーでいうFTPに近い位置づけです。ここでは、コーガンのパワーゾーンに添えられた心拍の目安と、コーチのジョー・フリエル氏の自転車用心拍ゾーンの2つを取り上げます。
コーガンの表の心拍の目安
TrainingPeaksの表には、各レベルにおおよその心拍数の目安がLTHRに対する%で載っています。
| レベル | LTHRに対する% | 例:LTHR 160bpm |
|---|---|---|
| L1 | 68%未満 | 109bpm未満 |
| L2 | 69〜83% | 110〜133bpm |
| L3 | 84〜94% | 134〜150bpm |
| L4 | 95〜105% | 152〜168bpm |
| L5 | 106%超 | 170bpm超 |
| L6 | 目安なし | ― |
| L7 | 目安なし | ― |
L6とL7には心拍の目安がありません。短く強い運動では心拍が安定しないため、強さの目安として役に立たないからです。L4は走り始めのうちはまだこの心拍に届かないことがあり、L5も心拍の上がりが遅れたり、最大心拍で頭打ちになったりして、平均心拍が目安に届かないことがあると説明されています。原典でも、パワーと心拍の関係は人によって違い、心拍の範囲はあくまでおおよその目安としています。
フリエルの自転車用心拍ゾーン
『トレーニングバイブル』の著者として知られるフリエル氏は、自転車用に次の心拍ゾーンを示しています。Z5をa・b・cの3つに分けているのが特徴です。
| ゾーン | LTHRに対する% | 例:LTHR 160bpm |
|---|---|---|
| Z1 | 81%未満 | 130bpm未満 |
| Z2 | 81〜89% | 130〜142bpm |
| Z3 | 90〜93% | 144〜149bpm |
| Z4 | 94〜99% | 150〜158bpm |
| Z5a | 100〜102% | 160〜163bpm |
| Z5b | 103〜106% | 165〜170bpm |
| Z5c | 106%超 | 170bpm超 |
コーガンの心拍の目安とフリエルのゾーンでは、同じLTHRを基準にしていても段の分け方が違います。どちらか一方を決めて使い続けるほうが、練習の記録を比べやすくなります。
LTHRの測り方(フリエルの30分テスト)
フリエル氏が紹介しているLTHRの測り方は、次のとおりです。
- しっかりウォームアップしてから、一人で30分間、全力のタイムトライアルを走る
- 開始から10分たったところで、サイコンのラップボタンを押す
- 最後の20分の平均心拍数が、LTHRの目安になる
注意点は2つあります。1つは、最初の10分を軽く流すのではなく、30分間ずっと全力で走ること。もう1つは、一人で走ることです。誰かと一緒に走ったりレースの中で測ったりすると数値が高く出てしまうため、その場合は30分ではなく60分にする必要がある、とフリエル氏は書いています。テスト中は心拍計の数字を見ずに、走りに集中するのがよいとされています。
「220−年齢」はなぜ当てにならない?
最大心拍数を「220−年齢」で出す方法はよく知られていますが、フリエル氏は、当たることもあれば外れることも同じくらいあるとして、使わないよう勧めています。
2001年に発表されたタナカらの研究では、351件の研究(18,712人分)をまとめて分析した結果、最大心拍数は「208−0.7×年齢」で表せることが示されました。あわせて、従来使われてきた式は年配の人の最大心拍数を低く見積もってしまうと報告されています。たとえば60歳なら、「220−年齢」では160bpm、「208−0.7×年齢」では166bpmとなり、差が出ます。ただし、どちらの式も多くの人の平均から出したもので、一人ひとりの最大心拍数がこのとおりになるわけではありません。
なお、RIDE-GATEのSSTの記事やZ2トレーニングの記事では心拍の目安を主に最大心拍数に対する%で書いていますが、この記事の心拍ゾーンはLTHRに対する%なので、同じ強さでも%の数字は一致しません。
Zwiftのパワーゾーン(6段階・色)とコーガンの違い
Zwiftでは、パワーの強さが6つの色に分けて表示されます。この6段階のゾーンの%は、Zwift公式のページでは確認できませんでした。Zwift Insiderによると、次のとおりです。
| ゾーン | 色 | 名前 | FTPに対する% | 例:FTP 200W |
|---|---|---|---|---|
| Z1 | グレー | リカバリー | 60%未満 | 120W未満 |
| Z2 | 青 | エンデュランス | 60〜75% | 120〜150W |
| Z3 | 緑 | テンポ | 76〜89% | 152〜178W |
| Z4 | 黄 | 閾値 | 90〜104% | 180〜208W |
| Z5 | オレンジ | VO2max | 105〜118% | 210〜236W |
| Z6 | 赤 | 無酸素 | 118%超 | 236W超 |

コーガンの7段階と比べると、違いは主に3つです。
- 段の数が違う:Zwiftは6段階で、L7(神経筋パワー)にあたる段がありません。L6とL7はまとめて赤のZ6に入ります
- Z1とZ2の境目が違う:Zwiftは60%、コーガンは55%と56%の間です。FTPの56〜59%は、コーガンではL2、ZwiftではグレーのZ1になります
- 上のほうの境目も少しずつ違う:L3の上限は90%、Z3は89%。L4の上限は105%、Z4は104%というように、1〜2%ずつずれています
そのため、同じワット数で走っていても、Zwiftの画面とTrainingPeaksなどの記録で別のゾーンに分類されることがあります。どちらかが間違っているのではなく、使っている物差しが違うだけです。
また、Zwiftのゾーンの色は、Zwiftに設定しているFTPをもとに決まります。FTPが古いままだと、色の表示も練習の強さもずれてしまいます。FTPを測り直したら、Zwiftの設定も更新しておきましょう(FTP測定方法の比較)。
Zwiftのワークアウトは心拍で強さを変えない
Zwiftのワークアウトは、FTPに対する%で負荷が決まります。Zwiftの公式フォーラムでは、スタッフが「Zwiftには心拍数をもとに強度を調整する機能はない」と答えています。心拍が上がりすぎてつらいときは、ワークアウトの強度(FTPバイアス)を下げる、Companionアプリやキーボードの操作で負荷を下げるなど、自分で調整します。目的別のワークアウトはZwiftおすすめワークアウト12選でまとめています。
パワーと心拍、どちらでゾーンを管理する?
パワーと心拍は、どちらか一方だけが正しいわけではありません。練習の種類によって向き不向きがあります。
- 短いインターバル(L5〜L7)はパワー:心拍は運動を始めてから上がるまでに時間がかかるため、数十秒〜数分の強い運動では、心拍を見ても今の強さがわかりません。コーガンの表でも、L6とL7には心拍の目安がありません
- 長い低強度(L2)はパワーを基準に、心拍の上がり方も見る:同じパワーでも、長く走るうちに心拍がじわじわ上がることがあります。この「心拍ドリフト」についてはZ2トレーニングの記事で解説しています
- 心拍は体調でも変わる:暑さ、疲れ、睡眠不足などでも心拍の出方は変わります。同じパワーなのにいつもより心拍が高いときは、体の状態を知るサインとしても使えます
パワーメーターがない場合は、心拍ゾーンとRPE(主観的運動強度)を組み合わせて強さを管理する方法があります。パワーで練習したい人は、パワーメーターの選び方や、パワーを測れて負荷も自動で変えられるスマートトレーナーの選び方も参考にしてください。
ゾーン別のおすすめ練習
各ゾーンの具体的な練習は、それぞれの記事で詳しく解説しています。
- L1・L2:Z2トレーニングとは?、高強度の直後にZ2を入れると強くなる理由
- L3〜L4:SSTとは?、Halvfems(90%FTP×36分のZwiftワークアウト)、The Kitchen Sink(90%FTP×4分×2本と高回転ドリルが入ったZwiftワークアウト)
- L5:VO2maxインターバルの比較、Rattlesnake、The Wringer
- ゾーンの配分:「中強度の罠」を抜け出す方法(ポラライズドトレーニング)
よくある質問(Q&A)
Q. L2とZ2は同じ意味ですか?
A. どちらも「エンデュランス」と呼ばれる、長く走り続けられる強さを指していて、ほぼ同じ範囲です。ただし、コーガンのL2はFTPの56〜75%、ZwiftのZ2は60〜75%(Zwift Insiderによる)のように、使うシステムによって数%ずれます。Z2の練習の中身はZ2トレーニングとは?で解説しています。
Q. ゾーンはどのくらいの間隔で見直せばいいですか?
A. ゾーンはFTPやLTHRから計算するので、測り直して数字が変わったときに見直します。フリエル氏は、テストをベース期の初めに行い、その後は4〜6週間ごとに行うことを勧めています。Zwiftの公式ブログでは、FTPテストは6〜8週間ごとが目安とされています(FTP測定方法の比較)。
Q. Garminなどのサイコンや時計の心拍ゾーンと数字が合いません
A. 多くの場合、基準と段の数が違うためです。心拍ゾーンには、最大心拍数を基準にするもの、LTHRを基準にするものがあり、段の数も5段階や7段階などさまざまです。機器やアプリの設定画面で、何を基準に何段階で分けているかを確認し、この記事の表と同じ基準にそろえると比べやすくなります。
Q. パワーゾーンと心拍ゾーンは一致しますか?
A. ぴったりとは一致しません。コーガンの表の心拍の目安はおおよその値で、パワーと心拍の関係には個人差があり、同じ人でも体調や気温で変わります。パワーを主にして、心拍は体の反応を見る補助として使うのがおすすめです。
まとめ
パワーゾーンと心拍ゾーンは、次の3ステップで練習に使えます。
- 自分の基準値を出す:FTPはFTPテスト、LTHRは30分テストで測る
- 表に当てはめる:パワーはコーガンの7段階(L1〜L7)、心拍はLTHRに対する%で計算する
- 目的に合わせてゾーンを選ぶ:土台づくりはL2、FTPを伸ばすならSST〜L4、VO2maxを伸ばすならL5
Zwiftの6段階はコーガンの7段階と境目が少しずつ違うので、同じワット数でも別のゾーンに表示されることがあります。どのシステムを使っているかを意識して、自分の数字で練習の強さを決めていきましょう。
登り向けの週の組み方はヒルクライムの練習方法(11/11公開予定)も参照。
