ケイデンスの目安は何rpm?研究で見る効率と回転数を上げる練習

この記事の目次
ロードバイクの練習記事やZwiftのワークアウトでは、「90rpmで」「ケイデンスを上げて」といった指示がよく出てきます。では、ケイデンス(ペダルの回転数)は何rpmくらいが目安なのでしょうか。「90rpmが正解」と言われることもありますが、研究を見ると答えはひとつではありません。
この記事では、プロ選手や経験者を調べた3つの研究の値と、編集部メンバーの4本の走行記録を並べて、強度や登りでケイデンスがどう変わるかを確かめます。後半では、Zwiftのワークアウトを使って回転数の幅を広げる練習も紹介します。
この記事の要点
- プロ選手が平均366Wで走った研究では、60rpmより100rpmのほうが効率が高かった
- 経験者7人の研究では、自分で選んだケイデンスは平地で平均89.3rpm、登りで82.1rpm。乳酸が最も低くなる回転数とほぼ同じだった
- 効率のよいケイデンスは強度が上がるほど高くなる(エリート選手6人の研究)
- 編集部メンバーの記録でも、楽な区間は56〜76rpm、FTPの87〜94%の区間は86〜90rpmと、パワーに合わせて回転数が上がっていた
- 「何rpmが正解」より、強度と地形に合わせて回転数を変えられることが大事
ケイデンスとは?同じパワーでも「ペダルの重さ」が変わる
ケイデンスは、1分間にクランクが何回転するかを表す数字で、単位はrpm(回転/分)です。パワー(ワット)は、ペダルを回す力(トルク)と回転の速さのかけ算で決まります。つまり、同じパワーを出すなら、回転数が低いほど1回ごとに強く踏む必要があり、回転数が高いほど1回ごとの力は小さくてすみます。
どのくらい違うのかを、編集部で計算しました。パワーを回転の速さ(角速度=2π×rpm÷60)で割ると、クランクにかかる平均のトルクが出ます(小数第2位を四捨五入)。
| パワー | 60rpm | 70rpm | 80rpm | 90rpm | 100rpm |
|---|---|---|---|---|---|
| 150W | 23.9 | 20.5 | 17.9 | 15.9 | 14.3 |
| 200W | 31.8 | 27.3 | 23.9 | 21.2 | 19.1 |
| 250W | 39.8 | 34.1 | 29.8 | 26.5 | 23.9 |
表の単位はN·m(ニュートンメートル)です。200Wの場合、60rpmでは31.8N·m、90rpmでは21.2N·mで、90rpmのほうが1回転あたりの力は約3分の2になります。回転数を上げると脚の筋肉にかかる1回ごとの負担は減りますが、そのぶん脚を速く動かす必要があります。どちらが得かを調べたのが、次の研究です。
研究で見るケイデンスの目安
プロ選手:高いパワーでは、低いケイデンスほど効率が悪い
スペインの研究(Lucía ほか、2004年)では、プロのロード選手8人が、平均366Wの同じパワーで6分ずつ、60・80・100rpmの3通りで走りました。総効率(体が使ったエネルギーのうち、ペダルを回す仕事になった割合)の平均は、60rpmで22.4%、80rpmで23.6%、100rpmで24.2%。100rpmは60rpmより有意に高い値でした。
回転数が上がるにつれて、酸素摂取量、心拍数、主観的なきつさ(RPE)、血中乳酸、太ももとお尻の筋肉の活動量(筋電図)も下がっています。著者は「高いパワーで走るプロ選手では、ケイデンスが上がるほど効率がよくなる」とまとめています。
経験者:自分で選んだ回転数は「最適」に近い
スイスの研究(Emanuele ほか、2012年)では、経験のあるサイクリスト7人が、トレッドミル(ベルトの上を自転車で走る装置)で平地で下ハンドルを持つ姿勢と、登りで上体を起こした姿勢を比べました。自分で自由に選んだケイデンスと、同じパワーで血中乳酸が最も低くなるケイデンス(最適ケイデンス)を調べています。
| 条件 | 自分で選んだケイデンス | 乳酸が最も低いケイデンス |
|---|---|---|
| 平地・下ハンドル | 89.3 ± 10.6rpm | 87.7 ± 10.9rpm |
| 登り・上体を起こす | 82.1 ± 11.1rpm | 81.5 ± 9.8rpm |
どちらの条件でも、自分で選んだ回転数と最適ケイデンスの間に統計的な差はありませんでした。登りでは両方とも平地より低くなり、出せる最大パワーは登りの姿勢のほうが平均2.0%高くなっています。著者は、多くの(ただし全員ではない)経験者は最適に近い回転数を自然に選んでいて、登りでは低めのケイデンスと上体を起こした姿勢が有利だとしています。±の幅が約10rpmあるように、ちょうどよい回転数には個人差もあります。
強度が上がるほど、効率のよい回転数も上がる
ノルウェーの研究(Foss・Hallén、2004年)では、エリートのロード選手6人が60・80・100・120rpmの4通りで、0Wから350Wまで強度を上げながら走りました。酸素摂取量が最も少ない(最も経済的な)ケイデンスは、0Wでは60rpm、350Wでは80rpmへと、強度とともに上がっていきました。段階的に強度を上げて限界まで走るテスト(約5分の短い運動)でも、350Wで最も経済的だった80rpmの成績がいちばんよかったと報告されています。

3つの研究を、編集部で表にまとめました。
| 研究 | 対象 | わかったこと |
|---|---|---|
| Lucía ほか(2004年) | プロのロード選手8人 | 平均366Wでは60→80→100rpmと上がるほど総効率が高い(22.4→23.6→24.2%) |
| Emanuele ほか(2012年) | 経験者7人 | 自分で選んだ回転数は最適ケイデンスに近い。登りでは平地より低い |
| Foss・Hallén(2004年) | エリートのロード選手6人 | 最も経済的な回転数は0Wで60rpm、350Wで80rpmと、強度とともに上がる |
どの研究も対象は6〜8人と少なく、プロやエリート、経験者が中心です。また、Lucía ほかの研究は100rpmまで、Foss・Hallénの研究は120rpmまでしか比べていないため、「何rpmが最も効率がよいか」は研究によって答えが違います(350W前後で、前者は100rpm、後者は80rpmがよい結果)。共通しているのは、強度が高いほど、低すぎるケイデンスは不利になりやすいという点です。
編集部メンバーの記録で見るケイデンス
研究の傾向が、ふだんの練習の記録にも出ているかを確かめるため、編集部メンバー1人の4本のライド(すべて屋内トレーナーで走るバーチャルコース)のケイデンスを集計しました。FTP(1時間ほど維持できるパワーの目安)は当時247Wです。
| ライド | 時間 | 平均パワー | FTP比 | 平均ケイデンス |
|---|---|---|---|---|
| A 平坦・一定ペース | 約43分 | 128W | 52% | 77rpm |
| B 構成ワークアウト | 約115分 | 181W | 73% | 82rpm |
| C 登りの多いグループ走 | 約144分 | 147W | 60% | 71rpm |
| D チームTT | 約43分 | 231W | 94% | 85rpm |
ライドCは獲得標高が約1,540mある登りの多いコースで、平均ケイデンスは4本の中で最も低い71rpmでした。いちばん強度の高いチームTT(ライドD)は85rpmで最も高くなっています。
パワーが上がると、回転数も上がる
ライドBは、強度の違う区間を繰り返す約115分のワークアウトです。1分以上の26区間について、区間ごとの平均パワーと平均ケイデンスを並べたのが図2です。

- FTPの29〜42%の楽な区間(11区間):56〜76rpm(時間で重みをつけた平均は約67rpm)
- FTPの87〜94%のきつい区間(13区間):86〜90rpm(同じく約88rpm)
- 最初の段階的に上げる4区間:FTPの42%→64%→77%→89%に対して、69→78→84→89rpm
26区間で、パワー(FTP比)とケイデンスの相関係数を計算すると0.97でした。ケイデンスを指定したワークアウトではないので、本人が自然に選んだ回転数です。強度が上がるほど効率のよい回転数も上がるというFoss・Hallénの研究と、同じ向きの結果になっています。
登りでは低く、TTでは高く
1分ごとの平均ケイデンスが、どの範囲に何%入っていたかを数えたのが図3です(ライドCは最初の46分、ライドDは最初の25分の記録)。

登りの多いライドCでは、80rpm以上だったのは4%だけで、78%が70台でした。チームTTのライドDでは96%が80rpm以上で、36%は90rpm以上です。平坦を一定ペースで走ったライドAは、70台と80台が中心でした。登りでは平地より低い回転数が選ばれるという、Emanuele ほかの研究と同じ傾向です。
結局、ケイデンスの目安は何rpm?
研究と記録をふまえて、編集部で場面ごとに整理しました。
| 場面 | 研究・記録で見えたこと | 考え方 |
|---|---|---|
| 平地の一定ペース | 経験者が平地で選んだ回転数は平均89.3rpm(ばらつき約±10rpm)。メンバーの平坦ライドは平均77rpm(FTPの52%) | 楽な強度なら低めでもよい。強度を上げるときに回転数も上げられるようにしておく |
| 登り | 経験者の登りの選択は平均82.1rpmで、平地より低い。メンバーの登りの多いライドは平均71rpm | 平地より低くなるのは自然。ただし重すぎるギアで回転が落ちきらないようにする |
| 高い強度(FTP前後〜それ以上) | プロは366Wで60rpmより100rpmが高効率。メンバーのFTP87〜94%の区間は86〜90rpm | 低いケイデンスは不利になりやすい。高い強度ほど回転数を上げる |
「90rpmが正解」というより、強度が上がったら回転数も上げ、登りでは少し下がるのが、研究と記録に共通する形です。まずは自分の記録で、強度別・地形別の平均ケイデンスを確かめてみましょう。パワーゾーンごとの強度の目安はパワーゾーン・心拍ゾーン一覧で整理しています。
ケイデンスの幅を広げる練習
ケイデンスは「高くすれば速くなる」ものではありませんが、同じパワーをいろいろな回転数で出せると、登りやペースの変化に合わせやすくなります。編集部では、次の順番で取り組むのがわかりやすいと考えています。
1. 自分の記録で、強度別の回転数を見る
サイクルコンピューターやZwiftの記録には、多くの場合ケイデンスも残っています(ケイデンスを測れるセンサーやトレーナーが必要です)。楽なライドとインターバルの日で平均ケイデンスがどう違うかを見るだけでも、自分のくせがわかります。パワーとケイデンスを一緒に見たい人は、パワーメーターの選び方も参考にしてください。
2. 同じパワーで回転数を切り替えるワークアウト
ZwiftのHalvfemsは、90%FTPの12分を3本走るワークアウトで、1本目は90rpm一定、2本目は1分ごとに60rpmと90rpm、3本目は2分100rpmと1分65rpmを交互に走ります。ERGモード(トレーナーが目標パワーを保つように負荷を自動で変える機能)なら、パワーを気にせず回転数を合わせることに集中できます。
強度の低い日なら、Z2走の時間に、同じパワーのまま回転数を少し上げ下げしてみるのもよい方法です。目的別にほかのワークアウトを探すなら、Zwiftおすすめワークアウト12選から選べます。
よくある質問
Q. 初心者は90rpmを目指したほうがいい?
A. 研究では、経験者が平地で自然に選んだ回転数は平均89.3rpmでしたが、個人差は約±10rpmありました。無理に数字を合わせるより、まず自分の今の平均を知り、強度を上げたときに回転数が落ちていないかを見るのがおすすめです。
Q. 登りでケイデンスが下がるのはよくない?
A. 研究でも、登りで上体を起こした姿勢では、自分で選ぶ回転数も最適な回転数も平地より低くなっていました。下がること自体は自然です。ギアが足りずに回転が大きく落ちてしまう場合は、ギアの選び方を見直しましょう。
まとめ
- ケイデンスは同じパワーでも1回転あたりの力を変える。200Wなら60rpmで31.8N·m、90rpmで21.2N·m(編集部計算)
- プロ選手の研究では、高いパワーで60rpmより100rpmのほうが効率が高かった
- 経験者は平地で平均89.3rpm、登りで82.1rpmを選び、それは乳酸が最も低い回転数に近かった
- 効率のよい回転数は強度が上がるほど高くなる。編集部メンバーの記録でも同じ傾向だった
- 目安の数字を追うより、強度と地形に合わせて回転数を変えられるようにする
