The Gorby(ザ・ゴルビー)は、Zwiftユーザーの間で「地獄のワークアウト」として知られる高強度トレーニングだ。5分間 110%FTPのインターバルを5セット繰り返す構成で、心肺機能・筋持久力・メンタル耐性を同時に鍛えることができる。過酷ではあるが、その分リターンも大きく、FTP 向上を狙うライダーにとって最短ルートの 1つといえる。この記事では、The Gorby の効果を科学的な視点から解説し、最大限の成果を引き出すための実践ポイントを紹介する。

出典:What's on Zwift? - The GorbyThe Gorby(ザ・ゴルビー)とは?Zwiftで人気の高強度インターバルワークアウト
The Gorbyの基本構成と時間配分
The Gorbyは、1時間で完結するインターバルセッションだ。10分間 30%FTP→80%FTPのウォームアップを終えると、5分間 110%FTPの高強度区間と、5分間 55%FTPのリカバリー区間を交互に 5セット行う。最後にクールダウンを挟み、合計60分のプログラムとなる。 このワークアウトは、FTP強化を目的とするサイクリストの定番メニューとして位置づけられている。
The Gorbyが「地獄」と呼ばれる理由
このワークアウトが地獄と呼ばれる理由は、後半に向かうほど強烈な疲労が蓄積する点にある。初回の 2セットは余裕を感じても、3セット目以降は脚の重さと心拍数上昇が一気に押し寄せ、5セット目では限界に達することが多い。FTP設定値が正確であればあるほど苦しさは増し、メンタル面の強さが問われる。The Gorby は、単なる体力テストではなく「精神的耐久力を鍛える場」ともいえる。
The Gorbyの効果|FTPを高める4つの生理学的メカニズム
① VO2 Max(最大酸素摂取量)の向上
The Gorby の最大の特徴は、心肺機能を限界まで引き上げることにある。110%FTPという強度は VO2Max 付近の出力域であり、心臓や肺が供給できる酸素量を最大限に引き出す。これを繰り返すことで、体内の酸素運搬効率が高まり、筋肉の酸素利用率も改善される。結果として、長時間にわたり高出力を維持する能力が伸び、FTP 向上の基盤が強化される。
② 乳酸耐性の向上と疲労耐久力の強化
5分間の高強度インターバルを繰り返すことで、筋内に乳酸が急速に蓄積する。この状態でのトレーニングは、乳酸処理能力を高める代謝経路を発達させる。The Gorby を継続することで、体は乳酸をエネルギーとして再利用できるようになり、「脚が重くなる限界点」を押し上げることができる。これにより、登坂やレース終盤でも高出力を維持しやすくなる。
③ 筋持久力とメンタル耐性の同時強化
The Gorby の真価は、肉体的だけでなく精神的な成長にもある。疲労が蓄積した状態で一定出力を維持することで、神経系が効率的に筋繊維を動員するよう適応する。また、辛さの中でリズムを保ち続ける経験は、レースやロングライドでの集中力維持にもつながる。The Gorby は「耐える力」を育てるワークアウトでもある。
④ 限界出力で「身体の使い方を考えさせられる」構造
ただ「5分×110%/5分レスト×5本」という高強度構成であるだけでなく、実は「身体の使い方を否応なく見直させる設計」になっている点が、特に大きな効果を生み出します。
序盤は出力だけで押し切れても、3〜4本目以降には疲労が蓄積し、無意識にフォームが崩れたり、呼吸が浅くなったり、ケイデンスが落ちやすくなったりします。その「あと数分で限界に達する感覚」が近づいた時に、「このままでは持たない」「どうすれば持つか」という問いが自然と湧いてくるのです。
この問いが出るからこそ、以下のような効率化が促進されます:
- ペダリングの力の向きをより意識する(円軌道を描くように)
- 上体の余分な力を抜き、脚ペダリングに集中する
- 呼吸のリズムを整えて酸素供給を最大化する
- ケイデンスとトルクのバランスを調整し、高回転で脚の疲労を遅らせる
つまり、ただ体力を削るだけでなく、「疲労と戦いながら、自分の身体の動きを改善していく学習機会」がこのワークアウトには組み込まれているのです。この視点を持つことで、5本目に近づいた時の苦しさも、むしろ“改善のチャンス”として捉えることができます。
The Gorbyの効果を最大化するための実践ポイント
トレーニング前の準備と設定
The Gorby を効果的に行うには、まず FTP設定値を最新に保つことが不可欠だ。古い値のままでは負荷がずれ、効果が薄れる。Zwift の FTP テストを事前に実施し、現在の実力に合わせよう。 また、ケイデンスは 90rpm 前後を目安に保つと効率的だ。高すぎる回転は心拍を無駄に上げ、低すぎると筋疲労が早まる。ウォームアップでは Z2~Z3のパワー帯で徐々に負荷を上げ、体を十分に温めておくことが重要だ。
実施中の意識ポイント
5分間の高強度区間では、序盤に力を入れすぎず、できるだけ一定出力を維持することが成功の鍵だ。出力スパイクは早期疲労を招く。呼吸は「吸う 2拍・吐く 2拍」を意識し、リズムを安定させると酸素供給がスムーズになる。心拍数が上がっても焦らず、回復区間でできる限り心拍を落とすよう意識する。The Gorby は、ペースコントロール力を磨くワークアウトでもある。
トレーニング後の回復戦略
ワークアウト直後の 30分間は「ゴールデンタイム」と呼ばれ、栄養補給による回復が最も効果的に行える。高 GI の炭水化物とタンパク質を組み合わせ、筋グリコーゲンの回復と筋修復を促そう。翌日は Z2 走または完全休養日を設定し、過度な疲労を避けること。フィットネス(CTL)と疲労(ATL)のバランス管理が継続の鍵となる。
The Gorbyの限界と注意点
実戦での課題と弱点
このセクションでは、The Gorbyの弱点や実戦での課題を解説します。The GorbyはFTP向上やフォーム改善に非常に効果的なワークアウトですが、すべてが実戦向きというわけではありません。その最大の弱点は、実際のレースで求められる「瞬発的な変化」や「アタックへの対応力」を養いにくい点にあります。
5分×110%という設定は、あくまで「VO2Max刺激」や「FTPブレークスルー」を目的とした理想化されたトレーニング負荷であり、現実のレースではこのような一定間隔でのインターバルはほとんど発生しません。また、実際のレースでは登坂やアタック、ドラフティング、位置取りなどによって出力が絶えず変動します。そのため、Gorbyのように「一定時間、一定強度を維持するタイプ」のワークアウトは、アタックの瞬間的な踏み直しや加速再現には向かないのです。
つまり、Gorbyは「エンジンを鍛えるワーク」ではあっても、「レースで勝つための動作再現トレーニング」ではないということです。特にレース志向のライダーにとっては、Gorbyだけに頼ると実戦対応力(ペース変動耐性・スプリント対応・リカバリー耐性)が不足する可能性があります。
そのため、シーズン後半やピーク期には、Gorbyのような固定強度インターバルよりも、より実戦的な「変化走」や「オーバーアンダー」系のトレーニングを組み合わせることが重要です。 Gorbyはあくまで「ベースを底上げする中間ステップ」と位置づけ、目的に応じて使い分けるようにしましょう。
組み合わせにおすすめのワークアウト例
- The McCarthy Special:100%→112%→125%を各3分行う3段階インターバル。登坂やアタック対応力、FTP向上を狙う実戦型メニュー。
- The Wringer: 30秒の超高強度を繰り返す無酸素系インターバル。アタックやスプリント局面を再現し、爆発的な踏み直し力と限界耐性を鍛える。
- SST(Sweet Spot Training): Z3〜Z4の境界で安定して走る練習。Gorbyの翌日に入れることで持久力の定着が狙える。
- Z2ロング(Endurance Ride):Gorbyで傷んだ脚を回復させつつ、脂質代謝と心肺ベースを再構築する低強度ロング。
The Gorby継続による変化と実際の成果例
4週間継続時の効果目安
The Gorby を週 1~2回ペースで 4週間継続すると、FTPが 3〜5%向上するケースが多い。これは 1時間あたりのパワー持久力が確実に高まっている証拠だ。さらに、VO2Maxの向上や、インターバル中の主観的運動強度(RPE)の低下も見られる。最初は「無理だ」と感じたセッションが、数回で完遂できるようになる過程こそ、The Gorby がもたらす成長の実感である。
プロ・上級ライダーの活用事例
多くの上級Zwiftライダーや実業団選手も、The Gorby を FTP改善のベンチマークセッションとして取り入れている。短時間で効率よく刺激を入れられるため、限られた時間でも成果を出しやすい。Zwift Academy などのプログラムにも応用例があり、トレーニング理論に基づく効果的なワークアウトとして高く評価されている。
The Gorbyが向いている人・向いていない人
向いている人
The Gorby は、FTPが停滞している中〜上級者に特におすすめだ。VO2Max 領域を鍛えたい、または短時間で効率よく追い込みたいライダーにも適している。時間が限られた社会人サイクリストにとっても、1時間で高い効果を得られるメニューとして価値が高い。
向いていない人
一方で、ベース期の初心者や疲労が残っている状態では実施を控えるべきだ。The Gorby は非常に負荷が高く、体調不良時に行うとオーバートレーニングのリスクがある。FTP設定値が高すぎる場合も同様で、まずは Z2〜Z3領域で体を慣らしてから挑戦するのが安全だ。
まとめ|The GorbyはZwiftでFTPを伸ばす最短ルート
効果の要点整理
The Gorbyは、VO2Max 向上・乳酸耐性強化・筋持久力アップを同時に得られる、FTP向上に最適なワークアウトである。正確な FTP 設定と適切なリカバリーを組み合わせることで、短期間でも確実に成果を実感できる。負荷の中でこそ成長が促され、継続が最大の鍵となる。
次に試すべきおすすめワークアウト
The Gorby を完遂できるようになったら、次は Over-Under Intervals や VO2Max Booster など、異なる刺激を与えるメニューに挑戦してみよう。体への負荷変化を取り入れることで、さらなる FTP向上が期待できる。Zwift の世界は、挑戦を続ける者に結果をもたらす。
結論: The Gorbyは、科学的根拠に基づいて設計された、FTP・VO2Max・メンタルを総合的に鍛える最強のワークアウトだ。Zwift で伸び悩みを感じているなら、恐れず挑戦してみよう。限界を越えた先に、確実な成長が待っている。
ナイスゴルビー
参考・出典
ワークアウト構成および画像の一部は、What’s on Zwift? – The Gorby の情報を引用しています。

