The McCarthy Special(マッカーシー・スペシャル)は、Zwiftの中でも屈指の負荷を誇るVO₂Max系インターバルトレーニングです。
FTPを超える強度を繰り返すことで、心肺機能・乳酸耐性・FTPの向上を狙えます。
強度が非常に高く完遂難易度も高いですが、そのぶん効果は絶大。レース終盤の踏み直しや長時間登坂にも強くなるなど、実戦で差がつくトレーニングとして上級Zwifterに人気があります。
この記事では、このワークアウトの構成・やり方・効果・実施のコツを徹底解説します。

出典:What's on Zwift? - The McCarthy SpecialThe McCarthy Specialの基本構成と時間配分
ワークアウト概要
- 所要時間 60分
- メイン強度 FTP100〜125%(段階的上昇3分×3セット)
- レスト FTP63%、各セット間9分
- ストレスポイント 90
- ゾーン目安 Z4 9分, Z5 9分, Z6 9分
全体の流れ
- ウォームアップ: 約10分(30〜70%FTPのランプアップ)
- メインセット:
・3分@100%FTP → 3分@112%FTP → 3分@125%FTP
・セット間に9分@63%FTPのリカバリー
・合計3セット - クールダウン: 約5分(70→30%FTPへ下げながら終了)
The McCarthy Specialの狙いと効果
The McCarthy Specialは、Zwift内でも屈指の持久系VO₂Maxインターバルトレーニングとして設計されています。短いスプリントではなく、FTPを上回る強度を長時間維持することで、心肺機能だけでなく乳酸耐性やFTP向上にも大きく寄与します。1セットごとに強度が上がる段階構成が特徴で、有酸素と無酸素の境界を刺激し、レース後半の“粘る力”を養う狙いがあります。
① VO₂Max(最大酸素摂取量)の向上
3分×3段階の高強度インターバルは、心拍数をVO₂Max域(最大心拍数の90〜95%)付近まで引き上げ、酸素運搬能力を限界まで刺激します。これにより、短時間での酸素供給効率が高まり、レース終盤のような高心拍状態でも安定して出力を維持できるようになります。特に各セットの終盤(125%FTP区間)では、酸素不足下での出力維持能力=VO₂Max耐性を鍛えられます。
② 乳酸耐性とリカバリー能力の強化
強度が段階的に上昇する構成により、体内では乳酸が蓄積→分解→再利用というプロセスが繰り返されます。これにより、脚の「焼けつく感覚」を感じながらも出力を保つ神経系の順応が進み、いわゆる乳酸耐性が高まります。また、各セット間の9分リカバリー(約63%FTP)は心拍を落としつつもアクティブな回復を促す設計で、現実のレースにおける“踏み直し→回復→再アタック”の動きを再現します。
③ FTPの底上げ
各インターバルではFTPを超える出力を9分×3セット繰り返すため、筋代謝系への刺激も大きく、結果的にFTPの向上につながります。特に100〜112%FTP区間では、長時間ゾーン4〜5を維持する筋持久力が養われるため、40分以上のヒルクライムやタイムトライアルでも安定して高出力を維持できるようになります。
④ 実戦での効果:登坂・踏み直し・終盤粘り
このトレーニングの恩恵は、実走で最も顕著に表れます。登坂中盤〜終盤での踏み直し、ゴール前のアタック、集団からの追走といったシーンで、酸素不足下でもパワーを出し続けられる能力が身につきます。The Wringerが「瞬発・爆発力系」であるのに対し、McCarthy Specialは長時間のVO₂Max滞在と持続的パワー維持に優れ、レース終盤に強いライダーを育てます。
The McCarthy Specialのやり方と実践ポイント
ウォームアップで心拍とケイデンスを整える
ウォームアップは単なる準備運動ではなく、後半の高強度区間で心拍を安定させるための重要なパートです。ケイデンス90〜95rpmを意識して脚を温めます。
呼吸を深く整え、身体の動きがスムーズになる感覚を掴むことが、その後のパフォーマンスに大きく影響します。
各セットで意識すべきペース配分
最初の3分@100%はリズム作りの区間です。ここで力を入れすぎず、ペースを一定に保つことが後の成功を左右します。
続く3分@112%は本格的に心拍が上がる登坂中盤のような負荷。脚を止めず、呼吸を一定に維持する意識が必要です。
最後の3分@125%は限界への挑戦です。酸素が足りない感覚の中でもペダルを止めず、目標ケイデンスを保つことが理想です。目標ケイデンスは人それぞれですが、はじめは100rpm前後を目安にすると良いでしょう。
リカバリーの9分@63%は、ただの休憩ではなく「乳酸を流す時間」。軽いギアでテンポを保ち、脚を止めないことが重要です。
そもそもThe McCarthy Specialは完遂できるのか?
The McCarthy Specialは、Zwiftワークアウトの中でも完遂が難しい部類に入ります。各セットの後半(3分@125%FTP)はVO₂Maxを超える強度で、心拍が限界値に達しやすく、脚が動かなくなるライダーも多いです。
なぜ脚が動かなくなるのか
脚が止まる原因は、単に「根性が足りない」からではありません。主に心肺の限界・筋代謝の限界・その連鎖反応の3つが同時に起きるためです。
- ① 心肺の限界: VO₂Max付近では心拍が最大の90〜95%まで上昇し、酸素供給が追いつかなくなります。体は酸素不足を補うために無酸素エネルギーを使い始め、息が吸えないほど苦しくなります。
- ② 筋代謝の限界: 酸素不足の状態で出力を続けると、筋内に乳酸と水素イオンが急速に蓄積し、筋肉のpHが下がって収縮効率が低下します。その結果「脚が重い」「力が入らない」状態に。
- ③ 連鎖反応: 心肺の限界→酸素不足→筋代謝悪化→出力低下、という悪循環が起き、最終的にペダルを回せなくなります。精神的には「脚が止まった」と感じますが、実際には筋の化学的疲労が原因です。
つまり、脚が動かなくなるのは「心肺が酸素を運びきれず、筋肉が酸欠・酸性化して力を出せなくなる」ため。The McCarthy Specialはまさにこの領域を狙った、限界刺激型のVO₂Maxトレーニングなのです。
完遂を目標にするのではなく、限界付近で踏み切れるところまで踏むことがこのワークアウトの本質です。週ごとに耐えられる時間が延びていくのを実感できれば、それが確実な成長の証といえるでしょう。
完遂したらFTPが上がっている?
これは筆者の推測ではありますが、The McCarthy Specialを完遂できたとしたら、すでにFTPが上がっている可能性が高いと思われます。
本来このワークアウトはVO₂Maxの限界を叩く設計であり、脚が止まってしまうのが普通。
もし最後まで走り切れたなら、それは現在のFTP設定値が実力より低いことを示しています。
言い換えれば、完遂できないくらいがちょうどいい──それがThe McCarthy Specialなのかもしれません。
実施頻度とおすすめの組み合わせトレーニング
The McCarthy Specialは非常に高い負荷を伴うため、週1回の実施が目安です。他のトレーニングとの間隔を空けて行うのが理想です。
他の日はZ2〜Z3のテンポ走やロングライドを組み合わせ、疲労を抜きながら有酸素のベースを保ちましょう。
補強メニューとしては「The Wringer」と「The Gorby」が相性抜群です。
Wringerは30秒×12本の超高強度インターバルで、スプリント力や再加速力を鍛えるメニュー。
一方Gorbyは5分×5本の110%FTP走で、持続力とFTPの上限を押し上げます。
これらを3〜4週ローテーションで回すことで、有酸素・無酸素・回復力のすべてをバランスよく伸ばすことができます。
The McCarthy Specialを継続するコツと注意点
このワークアウトは非常に消耗が激しいため、体調が悪い日や疲労が残っているときは無理に完遂しないことが大切です。1〜2セットで切り上げても構いません。継続することこそがトレーニングでは大切です。
フォームとケイデンスにも注意を払いましょう。高出力に意識が偏ると上体が揺れ、ペダリング効率が低下します。常に90rpm前後を保ち、体幹を安定させてリズムを崩さないようにします。
また、トレーニング後30分以内の栄養補給も忘れずに。糖質とタンパク質をバランスよく摂取することで、筋肉の回復とグリコーゲン再合成が促進され、次回のパフォーマンスに直結します。
まとめ
The McCarthy Specialは、FTP向上・VO₂max改善・乳酸処理能力の強化を同時に狙える、Zwift屈指の効率的なワークアウトです。
1時間で心肺・筋力・精神のすべてを限界まで引き上げることができるため、時間の限られた社会人ライダーにも最適です。
週1回継続するだけで、登りでの粘りやレース終盤の踏み直しに明確な変化が現れます。
「FTPをあと一段上げたい」「登りのアタックで千切れたくない」──そんなライダーにとって、The McCarthy Specialはまさに“脚を変えるワークアウト”です。
Zwiftのメニューにまだ取り入れていない方は、ぜひ次回のトレーニングで試してみてください。あなたのライドが確実に変わります。
1回やったらしばらくやりたくないですけどね(笑)
参考・出典
ワークアウト構成および画像の一部は、What’s on Zwift? – The McCarthy Special の情報を引用しています。

