ハンガーノック対策|補給食は1時間に何gの糖質?研究と指針の目安

ハンガーノック対策の時間帯別糖質目安。約1時間は口すすぎ/少量、1〜2.5時間は30〜60g/h、2.5時間超は最大90g/h(Jeukendrup 2014・Burke 2011・ACSM 2016)

ロングライドやレースの途中で、急に足が動かなくなり、頭がぼんやりする——いわゆるハンガーノック(低血糖による失速)は、体内の糖質(グリコーゲンと血中グルコース)が足りなくなったときに起きやすいと説明されます。怖がる必要はありませんが、「何時間走るか」に合わせて糖質を用意しておくと、失速のリスクを下げやすくなります。

この記事では、スポーツ栄養のレビューとACSM(アメリカスポーツ医学会)の合同ポジションスタンドが示す時間帯別の糖質目安(g/h)を整理し、編集部がジェル本数に換算した計算例を載せます。個人の体験談や診断は含みません。運営はRIDE-GATE編集部です。

この記事の要点

  • 約1時間前後の高強度では、口すすぎや少量の糖質でもパフォーマンスに役立つことがある(中枢神経系への刺激を含む)
  • 持続する持久運動の1〜2.5時間では、30〜60 g/hが目安
  • 2.5〜3時間を超える超持久では最大90 g/h。複数の糖(例:グルコース+フルクトース)の組み合わせが酸化量を高めやすい
  • 編集部の計算例(ジェル1本=糖質25gの作業仮定):60 g/hなら1時間あたり2.4本、3時間で7.2本
  • 必要量は体重やトレーニング歴だけでは決まらない。強度が低いときは下げる、とレビューでも述べられている

医療・個人差についての注意

この記事はスポーツ栄養の研究と指針の整理であり、医学的な診断や治療の助言ではありません。糖尿病などの持病がある人、低血糖の既往がある人、特定の食事制限がある人は、医師や管理栄養士の指示に従ってください。目安の数字は集団の知見であり、一人ひとりにそのまま当てはまるとは限りません。

ハンガーノックの症状と、起きやすい場面

サイクリストのあいだで「ハンガーノック」「ガス欠」と呼ばれる状態は、長く強く走っている最中に、エネルギー源としての糖質が追いつかなくなったときに現れやすいとされます。典型的に語られるのは次のような症状です(診断名ではありません)。

  • 急なパワー低下:それまで出せていた出力が保てない
  • 脚の重さ・協調の悪さ:ペダルが回しにくい、ケイデンスが落ちる
  • 集中力の低下・イライラ・冷や汗など、低血糖で報告されやすい全身のサイン

起きやすいのは、食前の糖質が足りないまま長時間走る、強度の高い区間が続く、補給を後回しにするといった組み合わせです。逆に、会話ができる程度のZ2トレーニングでは脂質の利用比率が高まり、筋グリコーゲンを節約しやすい、というのが有酸素基盤の記事でも触れている点です。それでも2〜3時間を超えると、Z2でも糖質の補給計画は必要になります。

糖質が切れると何が起きるか(ごく短く)

筋肉と肝臓に蓄えられたグリコーゲンと、血中のグルコースは、強度が上がるほど速く使われます。有酸素代謝の場であるミトコンドリアでは脂質も使えますが、高強度では糖質依存が大きくなります。補給が追いつかないと、出力を落とさざるを得なくなります。

一方で、約1時間前後の高強度では、糖質を「代謝の燃料として大量に足す」より、口の中ですすぐ(マウスリンス)程度でもパフォーマンスが上がることがある、とJeukendrup(2014)やBurkeほか(2011)はまとめています。脳が糖の存在を感じ取って運動の出力を調整する、という中枢神経系の説明です。

時間帯別の糖質目安(研究とACSM)

編集部で、3つの出典に共通する数字を表にまとめました。単位はすべて1時間あたりの糖質グラム(g/h)です。体重やトレーニング歴で割る必要はない、とJeukendrup(2014)は述べています。絶対強度が低いときは下げる調整もあり得ます。

運動の長さ糖質の目安出典で共通して書かれていること
約45〜75分の高強度〜約1時間口すすぎ、または少量代謝需要が小さくても中枢への刺激で効果が出ることがある
持続する持久運動 1〜2.5時間30〜60 g/h単一の糖源でも酸化はおよそ60 g/hまで、というのがJeukendrupの整理
超持久(おおむね2.5〜3時間超)最大90 g/h複数輸送可能な糖(例:グルコース+フルクトース)で吸収・酸化を高めやすい
表1 時間帯別の糖質目安(編集部まとめ。Jeukendrup 2014/Burke 2011/ACSM 2016)

ACSMの合同ポジションスタンド(Thomasほか、2016)の表でも、持久運動1〜2.5時間は30〜60 g/h、超持久(2.5〜3時間超)は最大90 g/h、高酸化を狙うときはグルコースとフルクトースの混合物、と整理されています。Burkeほか(2011)も、長い種目では30〜60 g/h、2.5時間超では最大90 g/hと、同じレンジを示しています。

編集部の計算例:ジェル何本分?

市販のジェルは製品ごとに糖質量が違います。ここでは比較のための編集部の作業仮定として、「ジェル1本あたり糖質25g」と置き、30/60/90 g/hが何本に相当するかを計算しました(割り算のみ。小数第2位まで)。製品の保証や推奨ではありません。

目安(g/h)1時間あたり(本)3時間の合計糖質3時間の本数
301.2本90 g3.6本
602.4本180 g7.2本
903.6本270 g10.8本
表2 ジェル1本=糖質25gと仮定した編集部の計算

同じ仮定で、60 g/hと90 g/hを2・3・4時間続けたときの合計糖質も計算しました。

レート2時間3時間4時間
60 g/h120 g180 g240 g
90 g/h180 g270 g360 g
表3 持続時間ごとの合計糖質(編集部計算)
時間帯別の糖質目安の棒グラフと、ジェル1本25g糖質と仮定した編集部の計算表。30g/hは1.2本・3時間で3.6本、60g/hは2.4本・7.2本、90g/hは3.6本・10.8本
図1 時間帯別の目安(左)とジェル換算の計算例(右)。データ:Jeukendrup 2014/Burke 2011/ACSM 2016、計算は編集部
計算の前提
25g/本は編集部が比較用に置いた数字です。手元のジェル・ドリンク・固形食は、パッケージの糖質量で割り直してください。90 g/hを目指す場合は、単一の糖だけだと酸化の上限(およそ60 g/h)に近づくため、複数の糖を含む製品や組み合わせがレビューで推奨されています。胃腸の慣れ(トレイン・ザ・ガット)も重要なので、レース当日に突然量を増やさないほうが安全です。

ハンガーノックが起きたときにできること

走っている最中に明らかな不調が出たときは、まず安全な場所に止まって休むことが先です。続けて強い出力を出す必要はありません。

  • すぐに糖質を摂る:ジェルやスポーツドリンクなど、手元の糖質源を使う(量は体調に合わせ、無理に詰めない)
  • 強度を落とす:回復するまで歩く・ゆっくり回す
  • 水分も確認する:脱水が重なると症状が悪化しやすい
  • 改善しない・意識がもうろうとする場合は救助を求める:無理にゴールを目指さない

予防の基本は、走る時間に合わせたg/hを事前に袋やボトルに分けておくことです。初心者向けの持ち物の考え方はロードバイク初心者の基本ガイドの点検ステップも参考にしてください。

よくある質問

Q. 体重で割ったほうが正確?

A. Jeukendrup(2014)は、運動中の糖質推奨は体重やトレーニング状態に依存しないと整理しています。g/hの目安をそのまま使い、強度が低い日は下げる、という使い方が近いです。

Q. Z2のロングなら補給は少なくていい?

A. 脂質利用の比率は上がりますが、2時間を超えるとグリコーゲンは減っていきます。ACSMの1〜2.5時間帯(30〜60 g/h)を下限寄りから試し、お腹の様子を見ながら調整するのが無難です。Z2の強度の意味はZ2トレーニングの記事で整理しています。

Q. 90 g/hは全員が目指すべき?

A. いいえ。超持久で高い酸化を狙う人向けの上限に近い数字です。胃腸が受け付けない場合は無理せず下げてください。複数の糖を使う製品でも、練習で試してから本番に持ち込みます。

まとめ

  • ハンガーノックは、糖質の補給が運動の長さ・強度に追いつかないときに起きやすい失速の俗称
  • 約1時間前後:口すすぎ/少量。1〜2.5時間:30〜60 g/h。2.5時間超:最大90 g/h(複数の糖)
  • 編集部の計算例(25g/本仮定):60 g/h=2.4本/時、3時間で7.2本
  • 数字は指針であり、個人差・胃腸・持病への配慮が先。医学的助言ではない
情報は確認日時点(2026年11月6日)のものです。研究の数値は各論文・ポジションスタンドによります。
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